本展示は、インターネット上に共有されている都市の立体データを素材として扱い、作者がその土地を訪れた際に得た気風や風土など元に作品を制作しています。「氣韻」は中国の古典画論、「古画品録」にある画六法のひとつ「気韻生動」をもじったものであり、都市にある品格、気品、精神的生命力を観察し、捉えることができる標本群を目指しています。
そして、本展示の可塑仮晶シリーズはそれを鉱物標本のような形態に収めることで幾何的な都市の形態と生命のかたちはひとつの線上に重ねることができるのではないかという考えを表現しています。「可塑(かそ)―Plasticity―」とは柔軟で、ものを作り替えることができるという事、「仮晶(かしょう)―Pseudomorph―」とは、ある鉱物の結晶が、その形を保ったまま、中身が他の鉱物に変化している鉱物の事を言います。
私たちが暮らす都市は日々のくらしのなかで鉱物が移り変わるように少しずつ、しかし確実に本質を変身させていきます。このシリーズが本物の鉱物に近い時間を刻んだとき都市の記憶と共にその氣韻が再び生まれ動きだすことを理想としています。