【作家からのコメント】
「充実した孤独感」というテーマをもとにシリーズ作品を制作しています。これは独りでいるにも関わらず心身ともに満たされた状態を意味し、主にぼやけた日常風景と黒い犬のシルエットの構成で表現されています。
今回タイトルとして選んだ“Xanadu”という単語は桃源郷という意味を持ち、今日までに様々な分野で使われてきました。私が最近取り組み始めた新しいシリーズ作品では、とあるきっかけから1940年代のモノクロ映画を援引しており、そのひとつにこの言葉が登場します。作中に現れるXanadu(桃源郷)と名付けられた城は、その意味虚しく、栄華を誇った主人公が最期に自身の孤独と手に入れられなかったものを思う場所として描かれました。
春から生活環境を一新した私にとって、新しい住居は時間の経過と共に幸福感と虚無感が入り混じる複雑な場所となり、次第にこれまで扱ってきた自身のテーマにも異なる視点を持つようになりました。心身が何物にも依存せず満たされた時、眼前にはどのような景色が広がるのでしょうか。
ご無理のない範囲でご高覧いただけますと幸いです。
畠中 彩
Hatanaka Aya