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ねみの日記 DAY.1 (2021/12/15) 

久保田音美(広島市立大学国際学部2年)が
広島でアーティストやギャラリーの人々に
出会っていく体験日記

もともと芸術には興味があった。広島市立大学には芸術学部があって、地元だし、国際学部なら受かりそうだなという理由だけで市大(いちだい)に入学したのだけど、最近は私は国際学部の勉強より専ら芸術関係の勉強ばかりしてしまっている。最初は駄目だなあと思っていたけど、勉強するにつれどちらも深く関連しているからまあいいかという気持ちで最近は過ごしている。

そんな中で、大学の講義を聴講していたらgallery Gに勤めている松波さんと知り合うことができた。そして気がついたらギャラリーでバイトをさせてもらうことになり、いろんなところに連れて行ってもらっている。それがこれを書いている今から1週間前の出来事。このログのような記事を書くことが決まったのもそれぐらいの時期。面白いことになったなあという感じ。

いわゆる”芸術畑”にいない私が広島のギャラリーやアトリエ、作家や作家を支える人たちとどう出会って、何を感じたかをここに書くことで、こんな面白い世界があるんだと思ってもらえたら嬉しい。


2021年12月15日

この日最初に連れて行ってもらった場所がTHE POOLで開催されていた村山悟郎さんの展示。村山さんは以前大学で講演を聞く機会があり存じ上げていたけれど、実際に作品を見たことはなかった。「じゃあ行こう!」ということで松波さんに連れて行ってもらった。その日は香村さんが在廊していて初めてお会いした。THE POOLはこじんまりとしたギャラリーで、木でできている部分とコンクリートが剥き出しになっている部分がある。暖かいけどクールな印象のある場所だった。

松波さんと香村さんが「牡蠣小屋に行きたい!」という話で盛り上がっているそばで、私は作品を見ていた。村山さんの作品については講義で少し解説があって、セルオートマトンとか自己組織化とかそういったキーワードは聞いていた。実際に作品を見ると、「なるほどな、講義で言っていたあの言葉たちをこうやって作品で表しているのか」と納得した部分もあったし、「よくわからん…」という気持ちになった部分もあった。それも全部ひっくるめて、感じたこと全部が面白かった。

途中で香村さんが解説してくれたり、こうやって見たら面白いよと裏話をしてくれたりしてそれも面白い。

村山悟郎「多の絵画」展示風景 (@THE POOL/写真 浅野堅一)

ギャラリーの強みは、作家や在廊している人と会話できて、発見や考えが深まることだと思う。けれど最初はやっぱり何を話していいかわかんなかった。「私はこう思った、」とか、素朴な「なんでだろう?」っていう部分については昔より素直に表現できるようになってきたと思う。作家と話したり、アート関係者と少しずつ話せるようになってきたのを感じる。そこに自分の理由があれば、作家を離れて作品を解釈してもいいし、作品のゆとりを信じて、臆さず感じて考えることを続けたい。そんなことを考えながら次の場所へ。

次に行った場所はピンクハウス!なんともファンシーな名前で、建物の見た目もなかなかファンシー。壁が可愛らしいベビーピンクで玄関横の室外機の上には胸像があったりして初っ端からインパクトの塊。ピンクハウスは手嶋勇気さんと諫山元貴さんという2人の作家が使っているオープンスタジオ(アトリエ)でこの日は手嶋さんに案内してもらった。1階は諫山さんが使っている場所で、立派なカメラや真っ白な腕とか顔とか死んでいるヤモリがいたり、奥の方に一つだけピンクの明かりがついていたり、大きな水槽があったり、こういう素材から表現と作品が生まれるのかと思うとパズルみたいだなと思った。手嶋さん情報によると、諫山さんは観葉植物にハマっているという。至る所に植物があり、買いすぎたサボテンが放置してあったりして、それもなかなか面白かった。

2階に上がると手嶋さんの使っているスペースがある。手嶋さんの作品を見るのは初めてで、手嶋さん本人に解説してもらえてなんとも贅沢な体験だなあとか思いながら聞いていた。昔手嶋さんが描いた「油絵!」みたいな具象の絵も見れたし、最近描いているシリーズのパキッとした色使いのラフでミニマルな風景画も、一挙に見ることができた。アトリエって歴史の流れを感じる場所だなあとしみじみした。他にも手嶋さんのスペースには本が色々置いてあったりして、これいいよね~とか、この作家はこういう人で~と解説してもらったり学びが多い時間だった。

ピンクハウスを出た頃には日が沈んで、ちょうど渋滞に巻き込まれてしまった。ゆっくり運転をしていた松波さんが「タメンタイ、オープンしたんよね、行ってみようか」と言い出し駆け込みタメンタイしてきた。

タメンタイは広島でアートマネージメント事業をしている会社で、12月14日に鶴見町ラボというスペースをオープンしたそうだ。以前講演会でお話を聞いたことのあったタメンタイを運営している山本さんと展示をしていた作家の富谷真美さん、以前gallery Gでお会いした作家の有田大貴さんがいた。有田さんはすぐ帰ってしまったが、松波さんと一緒にドローイングと地図に囲まれた展示をゆっくり見た。

私は地図というか地理というものが本当に苦手だ。頭に場を思い起こしたり、図面上を移動したりすることが得意ではないので、楽しめるかなあと心配だった。けれど、苦手だからこそ行ってよかったと思った。富谷さんの地図はただの可愛い地図ではなくて、実際に自分で歩いて感じた実感(距離・空間・時間など)や想いを地図に入れていて、私の知っている無機質に感じてしまう地図とは大きく違っていた。

ここからは、富谷さんの描かれている漫画「Aという場所について」を読んで事後的にさらに思ったことについて書きたい。この漫画は、地図は”多面体”のようなものではないか?という富谷さんの友人の言葉から話が始まっている。地図は様々な面(絶対面やふわふわ面と呼んでいるもの)や時間的なレイヤーがあってできているんだと気が付くところで漫画が終わるのだが、そういった考えが展示で見た地図のドローイングのスタイルになっているという実感を得ることが出来て面白かった。

展示では広島の地図を描いていて、地図と地続きに人や虫や鳥、川などの存在の視点というレイヤーがあることに気付かされるようなドローイングだった。そういった視点を取り入れて「ひろしまさんぽ」をしたくなるなあと思いながら、gallery Gに戻ってきた。

まだ、gallery Gに来て間もないのにここまで色々見てくると家に帰ってきたような気持ちがした。gallery Gや広島のアートスペースが私にとって本当の家のように感じられるまで、少しずつ開拓したり通ったりしたいなと思いながら1回目の日記を書き終えたいと思う。これからどんな出会いがあるのか楽しみだ。どんな私になっていくのかも楽しみだなあ。

久保田 音美

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