【レポート】YAMIICHI|ブラックアートマーケット 2026-spring
2026.4.1(水)
売ることが、表現になる場所
2026年3月21日、HDL+にて「YAMIICHI|ブラックアートマーケット」を開催しました。
YAMIICHIは、従来のアートマーケットではありません。売ることそのものを表現として捉える実践の場です。ここでは、「売る」という行為は作品と切り離されるものではなく、ひとつの表現として機能しています。

YAMIICHIは、作品や物品を売る場であると同時に、人と人が出会い、関係が生まれる場でもあります。今回の開催で強く感じられたのは、「売る」という行為そのものが、ひとつの表現として機能していた点です。
ある出展者は、価格を固定せず、物々交換や掴み取りといった方法を用いていました。そこでは、価値はあらかじめ決められるものではなく、その場の関係や対話の中で変わっていきます。売買は単なる取引ではなく、他者との距離を測り直す行為として作用していました。

「作品」と「生活」のあいだ
完成された作品に限らず、ドローイングや試作、スケッチの断片など、制作の途中にあるものも多 く並んでいました。通常であれば展示から外されがちなこれらの要素が、ここでは強い存在感を持って現れていました。
衣服や雑貨、化粧品など、出展者の生活に紐づく物品も持ち込まれ、「作品」と「生活」の境界 はゆるやかに崩れていきます。制作と日常が地続きであることが、自然なかたちで示されていました。
また、ZINEやブックレットといった形式も多く見られました。それらは作品の補足ではなく、アーティスト自身が思考や活動を編集し、他者へ手渡すための独立した表現です。

関係としての価値
「興味を持った人にしか価格を伝えない」という出品方法も見られました。価格は公開情報ではなく、関係性の深度に応じて共有されるものとして扱われています。そこでは、交換の前に、視線や関心のやり取りが必要とされていました。
こうした実践が並ぶ中で、小さな古書店の存在も印象的でした。異なる時間軸や編集の方法を持つ場が、流通や価値のあり方を見直す視点を全体に差し込んでいました。

YAMIICHIは、単なるフリーマーケットでも、既存の展示形式でもありません。完成された作品を並べるだけではなく、人と人が関わる過程そのものをひらく場として機能しています。
戦後の広島において、闇市は生きるための交換の場として存在していました。YAMIICHIはそれを再現するものではありませんが、「生きること」と「つくること」が交わる地点を、現在のかたちで引き受けようとする試みです。
価値がまだ決まりきらない状態。
人と人が、まだ確定しない関係の中で出会う場。
そのような未定義の領域を、今後も継続的にひらいていきます。
継続に向けて
次回は2026年秋ごろの開催を予定しています。本実践を一過性の出来事として終わらせるのではなく、広島という土地における表現と交換のあり方を、引き続き更新していきます。
今回は、いわゆる整えられた展示空間ではなく、仮設的で未完成な空間の中で、それぞれの表現を展開していただきました。
基本的なルールや配慮は前提としつつ、その範囲の中で、できる限り自由に、そして深く考えるこ とを求めています。
「どう見せるか」だけでなく、なぜ今これをつくるのか。
生きることと、つくることがどう結びついているのか。
整った環境では見えにくいものも、不均質な場だからこそ現れる表現があります。
時代性をどう引き受けるか。どこまで振り切れるか。
その一歩を、それぞれのかたちで提示していただけたらと思います。

YAMIICHIから、ツキイチヤミイチへ。
YAMIICHI|ブラックアートマーケットと同日に、「ツキイチヤミイチ」のプレオープンを行いま した。
ツキイチヤミイチは、HDL+で月に一度ひらかれるアートストアです。
画材、道具、額縁、素材、試作、制作の断片、展示で使われた什器や機材、アートブックや古書など。制作や暮らしの中で使われてきたものが並びます。使われなくなった物が、別の誰かと出 会い、また動き出す。ツキイチヤミイチは、そんな出会いと循環が生まれる場所です。
プレオープンでは、想像以上に多くのものが手に取られ、その日のうちに新しい持ち主のもとへと 渡っていきました。ものと人が出会い、また次の場所へと移っていく。その動きが、すでにゆる やかに始まっています。YAMIICHIで見えた動きは、一日で終わるものではなく、ツキイチヤミイ チへと引き継がれていきます。
ツキイチヤミイチは、2026年4月18日(土)より定期的に開催します。
▪ 開催情報
毎月第3土曜日
13:00−17:30
HDL+(広島市中区鉄砲町4-5ブラック画材4階)
最新情報は、YAMICHI Instagramにて随時お知らせします。

