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伊藤英二郎 個展 時間の記憶に息を吹き込む ― フォトグラビュールで捉えた Yveline Antiques.
2025.8.12 tue - 2025.8.24 sun
11:00〜20:00(Last day~16:00)
月曜休廊
8/12(火)
18:00〜 オープニングレセプション
19:00〜 ギャラリートーク「写真の芸術性を模索したピクチュアリスムと写真製版の覚え書き」(伊藤英二郎)
8/17(日)17:00〜 トーク「フランスの教育現場から見えた風景、そして平和教育と国立公文書館の役割」(伊藤英二郎)
私がフォトグラビュール(写真製版)という手法を通してパリの Yveline Antiques の息吹を撮し出してから、まもなく10年が経とうとしています。
光、物質、そして記憶が交わるこの繊細な錬金術のようなアンティークショップの存在を通して、私はこの場所に宿る「時」を写し取ろうとしてきました。
「このアンティークショップを通じて、平和と調和を伝えることも私たちの使命なのです。」
ある日、オーナーのアガタさんが私にそう語ってくれたとき、その言葉は私の内に深く響きました。
私はこの空間を、写真製版という技術を通してパリの変遷と歴史を刻む出発点にすることを決めたのです。
ここには、18世紀から現代に至るまでの、職人や芸術家の手によって生まれた家具やシャンデリア、絵画が静かに佇んでいます。ひとつひとつの品に刻まれた擦り傷やひび、くすみは、時間が物に遺していった沈黙の痕跡であり、次なる持ち主に引き渡されるまでの儚い一瞬のあいだ、それらは「時の儚さ」と「時間の奥行き」を密やかに囁いているのです。
私は、こうした「時間の層が幾重にも重なる場」で、マネキンや遺された家具にレンズを向け、沈黙するそれらの存在に視線を注ぎ、忘れられた肉体の記憶や、身体の存在そのものに問いを投げかけています。
それは、プルーストが綴った感覚と記憶の文学、つまり微細な感覚が記憶の深淵を開く瞬間に深く共鳴する試みでもあります。記憶が風景へと変わる一瞬、その瞬間を写真製版という技術によって呼び覚ますこと。そして、観る者のまなざしを通して、存在の多面性や沈黙の中に潜む変容を浮かび上がらせること。その営みはまさに、プルーストの作品における核心――「記憶」「時間」「自己」「見えない社会構造」を、視覚とモノという媒体を通して再構築する行為に他ならないのです。
(伊藤英二郎)
https://www.yveline-antiquites.com/en/2021/09/24/regarde-moi-2/
せこへい美術館
2025.8.11 mon – 2025.8.16 sat
10:00〜18:00(初日は15:00スタート)
会場:広島県民文化センター 地下展示室2・3(広島市中区大手町1-5-3)