タメンタイギャラリー 鶴見町ラボ|TAMENTAI GALLERY Tsurumi-cho Lab.
土井紀子・吉田真也「パワーの影とエネルギーの墓」
2024.10.26 sat - 2024.11.4 mon
11:00〜19:00
会期中無休
土井紀子・吉田真也「パワーの影とエネルギーの墓」をタメンタイギャラリー鶴見町ラボで開催します。
本展は、2024年8月から9月にかけて開催した「タイムとマシンの平和利用」を再構成するものです。広島では未展示だった2人の作品を通じて動力の変遷をまなざし、近代史を考えます。
土井紀子は、近年取り組んでいる馬とその影をモチーフとしたシルクスクリーンプリントを発展させた作品シリーズ「gallop」を出展します。モータリゼーション以前の馬は、運搬や耕運を一手に担う存在でした。しかし機械科学の発展とともにその役割を終え、現在では「馬力」という単位に荷役馬の面影を残すのみとなりました。作品は、透明なアクリル板上に刷られた馬の影の影を空間に映す投影機構と、馬への召集令状の色に倣って青く草木染めした和紙に馬魂碑とフィギュアの図を蓄光塗料でシルクスクリーンプリントしたものからなります。愛玩動物として理想化された姿で壁一面に駆け抜ける馬列と馬魂碑の姿がひっそりと映し出されます。
吉田真也は、土地の歴史や文化、風土などの人々の営みの痕跡を捉えた映像を残してきました。自身の出身地である青森県で制作した出展作は、六ケ所村の風景、そこに出土した縄文時代の甕棺、そして使用済み核燃料をめぐる架空のナレーションによる映像作品《或る考古学者の報告》と、8点組の写真作品《照らされる土地》からなります。村の風景を導入とした映像は、発掘された約4000年前の甕棺についての淡々とした学術的な説明が続くうちに被写体から逸脱し、放射性廃棄物の埋設をめぐる説明と混線し、重層的な語りとなっていきます。静かに地下に眠っていたものと眠りゆくものを通して、原子力の平和利用の根幹をなす核燃料サイクルの一大拠点の姿を投射します。
原子爆弾の投下により焼け野原となった広島市は、戦後に製造業を中心として復興を遂げました。しかしこの都市の成り立ちを語るとき、軍都としての性格を強くした明治期以来現在に至るまで軍需産業の拠点であることや、原爆投下によって人だけでなく多くの馬(軍馬を含む)も犠牲となったこと、そして被爆地だからこそ原子力の「平和利用」を推進することで「平和都市」を建設しようとした過去があったことは、消極的にしか扱われません。いまは静かに眠る馬の影と、使用済み核燃料が保管される広島からは遠い地の映像から、近代と動力を改めて考えます。
なお会期初日の10月26日(土)には、入居する第2三沢コーポのオープンデーが開催されます。普段は公開されていない部屋の様子を垣間見ることができる貴重な機会です。新たに整備したゲストルームでは、この日限定で川﨑夏美ワークショップと小展示も企画しています。ぜひあわせてご覧ください。