【作家からのコメント】
この度の展示のテーマは、「祠」(HOKORA)です。
「祠」は、いつの時代にあっても人々の日常にあり、訪れる者の思いや願いを清め祓い、心に新たな気色を映し出してくれる拠り所でもあります。
その「祠」の結界を越えた向こうにみえてくるものみえないものを想いながら、今回はコントロールのしづらい金属の酸化を作品の中に落とし込んでいく、そんな試みとなりました。
金属の多くは、化学変化によって酸化し固有の色(酸化物・さび)を発生させます。古い時代から金属工芸の世界では、その酸化を利用して表面を保護すると同時に美しさに変えてきました。
金属に炎を当て温度を上げていく、或いは試薬を使って反応させるなど様々な条件のもとで起こる酸化は、本来の金属の色を覆い隠す汚れのようなものでもありますが、それらは、進行する過程のなかで美しい色調、表情を移し出します。 均一にみえる金属の色がドラマチックに変容する不思議な魅力は、先人たちの探究心を掻き立てたに違いありません。
ご高覧いただけましたら幸いです。
コロナ禍にあり、ご無理のないようご案内申し上げます。
南 昌伸
Minami Masanobu