菅亮平 Unknown People 広島市立大学芸術資料館|Hiroshima City University Art Museum

広島市立大学芸術資料館|Hiroshima City University Art Museum

菅亮平 Unknown People

2025.3.20 thu - 2025.3.27 thu

10:00~17:00

会期中無休

[開催趣旨]

「空虚(ヴォイド)」を主題とした創作に取り組む美術作家の菅亮平は、広島において2021年に原爆ドームの第5回保存工事で使用された塗料による絵画作品《K 15-30D》の制作を開始するなど、戦後の歴史継承の問題をめぐって想起の芸術の今日的な可能性を追求しています。

本展では、広島平和記念資料館の被爆再現人形を題材としたリサーチ・プロジェクトの内容が発表されます。被爆再現人形とは、1991年から2017年まで同館で展示された、原子爆弾が投下された広島の被爆直後の灰塵に帰した都市の一角を再現したジオラマ内の成人女性と女子学生、男子を模したプラスチック製の等身大の人形三体を指しています。
2010年に広島市が策定した「広島平和記念資料館展示整備等基本計画」の中でジオラマと人形の撤去の方針が示され、2013年以降に被爆再現人形論争とも言うべき賛否両論の議論が起こります。最終的に、被爆の実相を実物資料で表現する方針によって、2019年の広島平和記念資料館本館リニューアル後は人形展示も含め展示内容が大幅に変更されました。このように世間の耳目を集めた人形ですが、製作された背景は不明な点が多く、燃え盛る炎の表現が演出されたジオラマ展示においてその詳細を観察することはできませんでした。
一連の経緯に関心を持った菅は、同館で保管されていたこれらの人形の現状調査を行うことにしました。文化財保存・修復の専門家に協力を依頼し、対象となるオブジェクトの表面・内部・構造・組成等の成り立ちを明らかにすることを試みます。

菅は、2024年7月から10月にかけて、原爆の図丸木美術館(埼玉県東松山市)での個展「Based on a True Story」において、本プロジェクトのワークス・イン・プログレスを発表しました。戦争がもたらした歴史の断絶と死の記憶を継承する上で、「ドキュメント」と「フィクション」はどのような関係性にあるのか。表象の可能性を問い続けてきた菅は、被爆再現人形と向き合うことを通して、歴史継承のメソッドについて再考を促しました。
原爆の図丸木美術館での発表から約半年間を経て企画される本展は、その後の継続リサーチを含めた内容によって再編されます。歴史は、時の経過という空白によって、常に未知(Unknown)のものとして私たちの前に広がっています。本展は、被爆80周年にあたる2025年に被爆地である広島の地で、「ヒロシマ」の歴史を未来へとつなぐ方法について、アートの領域から考察を深める契機となるでしょう。

(※ 本展は被爆再現人形本体の展示を行うものではありません。)

 

[イベントプログラム]
トークイベント | 「ヒロシマ」とアート

登壇:菅亮平+松岡剛(広島市現代美術館 学芸員)

日時:3月20日(木・祝)14:30-16:00

会場:広島市立大学芸術資料館展示室

広島市現代美術館は、1989年に国内初の公立の現代美術館として開館し、「ヒロシマ」との関連を示す作品を中心に取り扱ってきました。同館学芸員の松岡剛とともに、「ヒロシマ」をめぐるアートの系譜を概観しながらギャラリートークを行います。

 

[企画者経歴]

 

菅亮平 | Ryohei KAN

1983年愛媛県生まれ。2016年に東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了、博士号(美術)を取得。「空虚(Void)」をめぐる思考をもとに、多様なメディアを横断的に扱いながら作品制作とアートプロジェクトに取り組み、国内外で発表する。広島市立大学芸術学部講師。Setouchi L-Art Project: SLAP(福山市)の総合ディレクターを務める。

 

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